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気まぐれに大まかに生きるブログ

読書メモ

読んだ本の概要をメモしていく。適宜アップデート予定。

1.『もう銀行はいらない』(上念司)

銀行は担保の多寡によって融資の可否を判断する傾向があり、事業性は評価されない(する能力がない)。 しかもファックス・印鑑・紙書類の多用やシステム対応の弱さなど、その業務は非効率極まりない。 そんな銀行でも、かつては高金利かつ高成長のため利益を生み出すことができた。 しかし今は低金利でなおかつ企業側も銀行をあてにしなくなってきており、収益性は大きく低下。 金利の高い消費者金融を傘下に収め、(銀行側ばかりが得する)住宅ローンや投資信託に注力するも、効果は限定的。 かつては護送船団方式が戦後復興に一役買ったものの、今は逆に体質改善の足枷となる。 そればかりか銀行は総会屋やヤクザなどの裏社会ともつながり、大蔵省までもノーパンしゃぶしゃぶ事件により信頼は失墜。 その後何度か銀行融資回復のチャンスは訪れたが、日銀総裁の失策により機を逸する。 近年は日銀の舵取りに改善は見られたものの、肝心の銀行は未だに融資を増やさず、不祥事は後を絶たない。 このような銀行の腐敗は「人」が介在することが根本的な原因であり、技術革新が進んだ今、人を介さない銀行こそが求められている。 個人向けにはビッグデータ活用により瞬時に審査を行い、法人向けには投資商品を通して預金者と法人のマッチングに徹する。 日銀はステーブルコインの活用で、指標に基づいた機械的な通貨の配布と資産の流れの把握を行う。

2.『日弁連という病』(北村晴男ケント・ギルバート

日弁連は声明で死刑廃止を訴えているが、これは弁護士全体の総意ではなく、死刑存続支持の弁護士は多い。 確かにヨーロッパでは死刑を廃止した国が多いが、アメリカは過半数の州で死刑は執行されており、OECD以外の中国やサウジアラビアなどでも死刑存続。 それ以前に、死刑を廃止したとされるヨーロッパでは、裁判を経ずに加害者が射殺されるケースが頻発しているが、より酷いのはどちらか。 日弁連は強制加入団体であり、さらに地域ごとの単位弁護士会へも加入義務がある。 その会費は高額で、日弁連は年148800円であり、40億円以上の繰越金を計上している。 日弁連会長は選挙で選ばれるが、一般の弁護士は多忙であり、政治的に強烈な思想を持った弁護士が熱心に会務活動を行い、そういう人物が通りやすくなった。 青年法律家協会はほぼ全員共産党員。 日弁連非武装中立を主張しているが、非武装中立が幻想であることはクウェート侵攻から見ても明白。 2019年、日弁連の副会長に韓国籍の弁護士が就いた。この弁護士が会長を務めるLAZAKは反日を標榜している。 LAZAKは外国人参政権を主張しているが、殆どの国で外国人参政権は認められていない。 また、日弁連慰安婦問題に関して、吉田証言、クマラスワミ報告、朝日新聞の報道などに基づいた誤った声明を出している。 これらの諸問題を解決するには、日弁連を任意加入団体にすれば良い。弁護士の統治は単位弁護士会だけで十分。 または、弁護士法に政治活動の禁止を明記することでも達成される。

3.『無理ゲー社会』(橘玲

ものが豊かになった日本。しかし、2020年、自民党山田太郎参議院議員SNSで「どんな不安を持っているか」と問いかけると、「自由に自殺できるようにしてほしい」との意見が相次いだ。 自分らしく生きることが良いこととされた裏返して、自分らしく生きられない人々が生きづらくなっていることを示している。 現代では、かつての貴族社会・階級社会は廃止され、誰でも後天的に身につけることができる学力などによって人を評価することで、経済格差を正当化している。 だがこの根拠は正しいだろうか? 事実として、知能は遺伝の影響が大きく、努力できるかどうかすらも大半が遺伝で決まる(遺伝ガチャ)。 また、教育格差は家庭の経済力にも依存し(親ガチャ)、市場がどのような能力を評価するかによっても価値が変わる。 このような状況下で「努力しない人間が貧困に陥るのは本人が悪い」という極端な思想は、 遺伝による社会の分断であり、新たな知能貴族社会の誕生を意味する。 分断により虐げられた人々は、鬱憤のぶつけ先を陰謀論に求め、政治家がそれに目をつけて世論を形成する。 一方で、大卒が自己実現のキーであると教えられて夢叶えたはずのアメリカの大卒者は、近年、学歴に見合ったポストが不足しているために、学歴に比べて低賃金な仕事につくケースが増えている。 ではどうすればよいか。 UBIは「誰に支給するか」という問題がある。移民に支給するか?金目的に結婚と離婚を繰り返す場合や、カネ目当てで子供を作る場合はどうするか。 資本主義の発展のためには、累進課税は程々にしたほうがいいが、それが民衆の生きづらさに致命的な影響を与えているならば、多少資本主義の効用が落ちても、累進性を強くすることはあり得る。


(2021-9-20)

4.『高学歴社員が組織を滅ぼす』(上念司)

高学歴社員とは、リスク回避優先で自己保身的で、肩書で人を判断して態度を変えるような人間を指す。 また、得てして現状維持バイアスにとらわれ、不確実な状況における判断や危機対応が苦手である。 トヨタやグーグルなどはそういった方向性の間違いに気を付け、会社の形を変え続けているが、 (当時就職ランキングトップだった)銀行はバブル崩壊でいくつも経営破綻し、 すき家のアルバイト大量離脱、朝日新聞捏造報道、大塚家具のビジネスモデルの陳腐化、ビジネス以外だと日本軍のインパール作戦の惨劇や原発事故時の空自機Uターン指示などが高学歴社員的な「脆弱なマネジメント」に分類できる。 組織がこのような脆弱なマネジメント下に置かれると、社員ははじめのうちは愚痴を言いながらも指示に従うが、限度を超えると、指示を受ける代わりに横暴に振舞い、経営陣にダメージを与えるようになる。 昨対比による無理なノルマ、人件費削減目当ての名ばかり成果主義、またはそもそも業界自体が袋小路に入っている場合などに起きる。 特に酷かったのは旧社会保険庁で、緩み切った組織を解体しようとした第1次安倍政権を逆に倒してしまった。 一時期は適切なマネジメントであっても、時代と共にそのままでは脆弱なものに成り代わってしまう恐れがあり、不断の見直しが必要。 マクドナルドやGM、果ては大学の弁論部までもこの罠にはまった。 このような脆弱なマネジメントに付き合わされてしまったら、どうすればよいだろうか? 転職、フリーランス、医師・弁護士など資格職への転向は、場所が変わるだけで同じように何らかの脆弱なマネジメントに遭遇する可能性がある。 マネジメントそのものを変えたい場合、現状のルール下で結果を出し、信頼を得なければならない。どんなに正論でも、結果を出していない人間の言葉は無視されるからである。


(2021-10-10)

5. 『これが世界と日本経済の真実だ』(高橋洋一

パナマ文書が世界をにぎわせたとき、日本での報道は尻すぼみだった。それは、日本人の名前が少なかったからで、何故なら日本人でこういう租税回避をしている者の多くはパナマではなくバミューダルクセンブルグであり、そこの文書が流出すれば多くの日本人の名前が見つかるだろう。タックスヘイブンの利用を勧めていたのは、実は弁護士や会計士。TVの弁護士のコメントの切れ味が悪かったのは、租税回避を利用する側の人間だから。一方で日本の政治家はタックスヘイブンを使う必要がない。政治資金団体など現行の日本の法律でいくらでも課税逃れができるからだ。それどころか逆に、2010年民主党政権時代、タックスヘイブンのトリガー税率を25%から20%に引き下げた。課税逃れを推奨しているかのような決定で、謎である。 ブレグジットについては、そもそもイギリスはEEC時代EFTAに加盟するなど、EUとは距離があり、判例法主義と成文法主義の違いもあり、シェンゲン協定にも入っておらず、通貨もポンドのまま。EU離脱は自然なことであったともいえる。EUは適正規模から考えると大きすぎ、今後は縮小傾向になることが予想される。 中国の実体経済に疑いの目が注がれているが、ソ連崩壊後に実際のGDPが半分だったことが判明したことを考えれば、中国も実際は半分以下だろう。これは輸入統計からも推測できる。 消費税増税は景気に水を差す。そもそも消費税を社会保障に使うのは非常識。それがまかり通っているのは税の徴収漏れが多いからで、ワンストップで納付できるように歳入庁を作るべき。これに抵抗しているのが財務省で、国税権力を手放そうとしない。 新聞は日刊新聞紙法、再販規制、国有地払い下げ、軽減税率という4つの既得権に固められた規制産業であり、テレビも電波オークションを免れているので同じ。ちなみに、再販規制は書籍も同じ。 舛添都知事辞任問題でフォーカスされた政治資金規正法は、実際には何も規制していないザル法である。 原発は実際には、安全対策や周辺コストなどトータルで考えると実は高コストであり、自然に淘汰されうるものである。


(2021-11-13)

6. 『医学部』(鳥集徹)

近年、医学部の入試難度が上昇を続けており、軒並み医学部を除いた東大より難しくなっている。 これは相対的に「安泰な」職業として医者を目指す生徒が増え、さらに難易度が上がったことで単に難易度の高い学部を目指したいという生徒の希望を引き付けていることによる。 しかし医学部はそもそも医者を輩出するための「職業訓練校」であり、実習とテスト漬けのハードな日々が待っている。 1単位でも落とすと留年になる事や、多くの大学で医師国家試験に合格見込みがない学生は容赦なく留年させられることも含め、医者になりたいという強いモチベーションがないと卒業は容易ではない。 また、本当に安泰かどうかにも疑問符が付く。確かに勤務医の平均給与は1500万ほどだが、勤務時間が非常に長く、時給換算すると額面ほど楽に稼げるわけではない。 また開業医であっても、新規開業であれば、多額の開業資金と高度な経営センスが求められる。 さらに今安泰であっても、長期的に考えれば、医学部定員増と人口減少により、20年後をめどに医師が余ることが予想されているのに加え、人間の医師より正確に診断できるAIの登場により、AIへの置き換えも徐々に始まるだろう。 これからの時代、医師になろうとする者には、患者との意思疎通とチーム医療のためのコミュニケーション能力が求められる。また、医師になってからも、英語の論文から最新研究をキャッチアップし続けなければならない。 加熱する医学部受験ブームを前に、一歩立ち止まって考えるべきだろう。 また、大学側の話として、診療科ごとのピラミッド型組織として「医局」という制度が存在する。これがかつては大変な悪弊を生み出していた。 当時の新米医師の多くは母校の医局に所属することになるが、関連病院と連携し、どの医師をどこに送るというのが医局ごとに決定権を持っており、この体制に逆らうと診療から外されたり、医局を抜けても就職の妨害をされたり、また普段から所属医師に上納金をおさめさせるなど、ヤクザのシステムと酷似した慣行がまかり通っていた。 しかし、2004年の新臨床研修制度により2年以上の臨床研修が必修化され、受け入れ体制が充実した病院に希望が集中したため、旧弊な医局は弱体化した。


(2021-11-17)

7. 『総務省解体論』(原英二)

総務省はもともと、自治省、郵政省、総務庁の3役所が合体して誕生したが、それぞれオフィスのフロアも異なり、採用も別々でやっている。 これは政治的妥協の結果。省庁再編のとき、総務庁自治省の機能は内閣に吸収され、郵政省は解体される予定だったが、郵政省が政治家に強力に圧力をかけて存続の流れを作り、通産省との合併、運輸省との合併の両案も政治的に頓挫し、総務省の発足が決まった。 しかし、それによってもたらされたのはぬるま湯・馴れ合いの構造だった。 通信の分野ではiモードの時代が終わるとGAFAに抜かれ、テレビ業界は無為無策のまま斜陽産業となり、自治の分野では地方分権は進まず、行政管理の分野では近年注目されるように省庁の労働環境の悪化に歯止めがかからない。 中でも、電波の割り当てに裁量行政が色濃く残り、癒着体質が温存されている。 電波帯域は有限なので有効活用が欠かせないが、地方のテレビなどは、40チャンネル分もあるのに7チャンネル前後しか使用されていない。 しかもその電波使用料は数億程度などと異常に安い。 解決策は単純で、電波オークションを行う事だ。日本を除くOECD全加盟国でも導入されている。 またこの電波割り当てと電波利用の監視を別組織にし、電波監理委員会を作るべきである。 NHK改革の進みも遅い。受信料モデルは限界であり、災害報道などを除いて分割民営化すべきである。 地方自治はめちゃめちゃである。2000年に機関委任事務が廃止されるまで、地方自治体の仕事の半分以上は国の委託だった一方で、申請書のフォーマットは市町村によってばらばらで統一すべきところだけ変に自由が認められている。 国家戦略特区では特に企業の農地所有を可能にする養父市の成功例が顕著で、繁閑差の激しい会社が閑散期に農業にシフトするなど、農地と雇用を両方守る取り組みが進められた。 にもかかわらず、個人農家に耕作機械や肥料を高値掴みさせることで金を稼いできた農協はこれの全国展開に反対し、特区のみ許可の状態が続いている。 自治省相当の組織は廃止し、システマティックな調整機能のみを残すべきである。 また、行政管理の観点では、令和の第三臨調を創設し、内閣人事局を正常に機能させるべきである。