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気まぐれに大まかに生きるブログ

読書メモ2022

適当に。

「日本型格差社会」からの脱却 (岩田 規久男)

日本は1990年代以降のデフレ政策により低成長が続き、非正規雇用の割合が増え雇用の二極化が進み、相対的貧困率が上昇し、年金の世代間格差が深刻の度合いを増している。 2012年からの安倍政権で好転の兆しを見せるが、2度の消費増税により水が差された。 一部、非正規雇用の増加を小泉政権のせいにする論調があるが、実際に派遣労働者の割合が20%を超えたのは1990年。 労働者派遣法の改正は、期間を1年から3年に延長したもので、実際にはどちらかといえば雇用の安定化に寄与したことに注意が必要。 また、所得税高所得者ほど率が低くなるいびつな構造になっている。 これらの問題を解決するため、生産性を向上させ、資本所得課税に累進性をつけ、雇用契約を自由化し、積極的労働市場政策をとり、所得再分配・公的補助の対象を集団・組織から個人にし、給付付き税額控除を導入し、年金清算事業団を設立する必要がある。 生産性について、一般的に算出される労働生産性は、景況感の影響の色濃い後付けの数値になっており、本当の労働生産性を必ずしも示していないことに留意が必要だが、 生産性向上自体は必要であり、とくに中小企業に対して、保護政策ではなく健全公正な競争政策をとるべきである。 というのも、なぜか交際費の損金算入が中小企業にのみ許されていたり、不必要に中小企業を保護しようとするあまり中小企業から創意工夫のインセンティブを奪っている。 なお、最低賃金の引き上げが生産性向上に資するかどうかは様々な研究があり、まだ結論の一致を見ていない。 雇用の自由化については、判例による整理解雇の4要件が厳しすぎ、経営者は新規の正規雇用や賃上げに消極的にならざるをえず、全国的な就職難・非正規雇用の拡大や賃金停滞を誘発した。 雇用契約に有期・無期の別を無くしたうえで、解雇時は6~12か月分の給料を支払うことで通常時の解雇を可能にする金銭解雇のルールを定めるべきで、この場合同時に、解雇率の高い企業の雇用保険料率を割増させることと、解雇手当の原資の積み立てファンドの義務付けもしたほうがよい。 また、150万円(130万円、103万円)の壁も撤廃すべきであり、 自営業者の親が所得10万円などと申告した学生の奨学金審査が優先されてしまうなどの事例からも、自営業者などの所得の把握が正確に行われていない現状を踏まえ、マイナンバーカードと資産の紐づけが必要である。 生活保護は、ほとんど無一文にならないと申請できないケースが多いため、雇用保険生活保護の間に支援の穴ができている。 これに対し、負の所得税型の給付付き税額控除で対応すべき。 それ以外にも、時代遅れな配偶者控除の廃止、生活保護者の異常に高い勤労控除の引き下げ、求職者支援給付金を生活保護の水準に引き上げなどが必要。 今の日本の年金は修正賦課方式であるため、1940年代生まれは3000万円以上過剰給付を受ける一方、2010年生まれは逆に2500万円以上の過少給付となる。年金は積み立て方式にしなければ、年金財政は維持できない。 これを移行する際、年金は巨額の収支不足に直面するため、年金清算事業団が年金清算事業団債を発行し、新設の積立型年金の保険料収入でこれを購入することで当面の収支不足を緩和することが望ましい。

追記:2022-07-14

砂戦争(著:石 弘之)

砂はコンクリートの骨材として重要な資源であり、近年その枯渇から砂の価格が高騰している。 砂漠の砂はツルツルしすぎている上に塩分含有量が多く、強度の観点から骨材として使えないので、適度にザラザラした砂は争奪戦になっている。 中国・ドバイ・ジャカルタシンガポールなどで特に大量の砂が使われ、砂の過剰採掘による環境破壊が問題になり、 採掘規制や輸出の禁止などを行ったものの、当局関係者と癒着しての違法採掘が後を絶たず、実態を探ろうとしたジャーナリストの暗殺事件も起きている。 ツバルは、地球温暖化による海面上昇で消滅の危機にある国家として認識され、各国から多額の支援を受けているが、 実際には海面上昇の影響因子は複雑であり、近隣他国の海面上昇は問題になっていないことも踏まえると、 地球温暖化より、砂の過剰採掘による有孔虫の減少が海岸浸食を引き起こす大きな要因になっているとみられる。 2mm以上の粒は砂利、2mm~0.125mmの粒を砂、それ以下は泥であり、0.125mm~0.004mmはシルト、それ以下は粘土と呼び分けられている。 セメントは、石灰を砕いて焼き、砂と混ぜることで作られ、ピラミッドや古代ローマの建築物に使われる。 それらの建造物が今でも多く現存していることから、強度の高さがうかがえる。 セメントに水と砂を加えるとモルタルモルタルに骨材と水を加えるとコンクリート、コンクリートに補強用の鉄の棒を入れると鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete/RC)、さらに鉄骨で補強すると鉄骨鉄筋コンクリート(Steel Reinforced Concrete/SRC)となる。 ちなみに、コンクリートが固まる水和反応の原理は2016年にMIT教授により解明されるまで謎だった。 コンクリート以外にも砂の用途は多岐にわたる。 ガラスは、18世紀フランスで窓ガラスが発明され、現代のフロート製法では珪砂・ソーダ灰・石灰石を窯で溶かして引き伸ばして作られる。 半導体の基板は、砂の中に含まれるシリカからシリコンを抽出して作られる。 また、シェールオイル採掘にも使われる。 採掘の手順としては、頁岩層(シェール層)に縦に数千メートルの穴を掘り、そこから横に2000メートル掘ってから、砂を混ぜた水を高圧で送り込んで亀裂を入れ、ポタポタと出てくる油を回収する。 この際、挿入する砂には亀裂に入る小ささ、亀裂を支える強度、油を通す砂の丸みという条件が揃っていなければならず、95%以上が石英だと良いとされ、環境規制の緩いミネソタ州などの石英砂が採掘のターゲットになっている。

追記:2022-08-11

理系思考入門(著:高橋洋一)

日本の財政は健全であり、これはIMFのFiscal Monitor 2018から分かるように、負債は確かに世界的に巨額だが、同様に資産も巨額なため、ネットでは多少のマイナスに過ぎず、G7ではトップクラスに良い。多少マイナスでも、徴税権などの見えない資産があるため、この程度のマイナスは先進国では一般的で問題はない。それでも借金の絶対額を問題にするのであれば資産を売却すれば良いが、天下り確保のために使われているため省庁はこれに同意しない。当時から問題視されていた400兆円規模の財政投融資は、ALMの考えを導入して150兆程度まで圧縮できた。インフレを加速させない失業率の下限をNAIRUといい、これをもとにインフレ目標が設定される。年金は長生き保険であり、社会保険料という保険料で基本的に賄われており、消費税を社会保障財源として使うのは根本から間違っており、それを根拠にした消費税増税もまた間違っている。本来消費増税によってビジネスがしにくくなる財界までもが消費増税に賛成しているのは、労使折半の社会保障料の値上げを嫌うという理由からと思われる。そもそも法人税や資産税は、所得税が完璧に機能していれば必要のない税目である。「クロヨン」という言葉は、サラリーマンは9割の所得税が捕捉できているのに、自営業は6割、農林水産業は4割しかできていないことを嘆くワードである。現在の地方交付税と、消費税の国庫分はほぼ同額であり、社会保障を人質に消費増税を狙うロジックを封じるためにも、消費税は地方税化すべきである。消費税の導入にあたっては、個人コード制度、グリーンカード制度、国民福祉税など色んな案が潰されて紆余曲折を経て成立した呪われた税制であるともいえる。増税する前に資産所得を把握し、税と社会保険料は歳入庁を新設して一括で徴収を行うべきである。戦後経済史において、傾斜生産方式は効果がなかったことに注意が必要で、1ドル360円は介入せずに放置されて達成されたものではなく、目一杯介入して360円になるように調整してできたものであり、バブル期のインフレ率は最大でも3%程度で、土地と株だけが異常に値上がりしており、一般物価は平常であったにもかかわらず、これを読み違えて日銀が利上げしたことで失われた20年が始まった。固定相場制では公共投資が効果的で、変動相場制では金融政策が有効(マンデルフレミング効果)。レーガノミクス信奉者はラッファーカーブを元に減税を主張するが、そのカーブのどこに現状が位置するかは決まっていないので無効な理論である。バブルの株価高騰は、法律の抜け穴を利用した営業特金、損失補填、利回り保証によって生み出された異常な回転率によるものであり、抜け穴を塞いでからバブル崩壊が始まった。輸入品に関税をかけるとデッドウエイトロスが発生し、利得の総量は下がる(p323)ので、基本的に関税は低いほど良い。関税引き下げや貿易自由化は国内の生産者に不利にはなるが、国全体としての利益は必ずプラスになるので、国内の事業者に全額補填してもプラスが残る。このようにデータから分析することは重要で、7勝7敗で千秋楽を迎えた力士の勝率が、八百長不祥事の報道があるたびに下がっていく、つまり八百長が減っていることもまた、データから読み取ることができる(p391)。