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気まぐれに大まかに生きるブログ

wiisメモ(ルベーグ測度~ディニ微分)

前回の続き

mathjax

  • コピペ用ゼロ幅空白「​」

ルベーグ測度

  • 数直線 $\mathbb{R}$ 上の右半開区間すべてを集めた部分集合族 $\mathfrak{S} = \{[a,b) \mid -\infty < a \leq b < +\infty \}$ を考えると、これは3つの性質を持つ
    • 空集合区間であること
    • 有限交叉について閉じている(closed with respect to finite intersections): 有限個の区間の共通部分もまた区間であること
    • 2つの区間を任意に選んだ時、その差集合は重複のない有限個の区間の和集合で表せること、つまり $$I \setminus I' = \bigcup_{k=1}^{n} I_{k}$$
  • ($\mathfrak{S}$はフラクトゥールS)
  • ↑の3つの性質を持つ集合族を集合半環(semi ring of sets)という
  • 区間や閉区間だと3つ目の条件を満たさない。半開区間である必要がある
  • 集合環(ring of sets)は、差集合と和集合について閉じている必要があるが、上記の $\mathfrak{S}$ は、そのどちらについても、複数の区間が生まれて $\mathfrak{S}$ の要素ではない集合が出てしまうので条件を満たさない
  • $σ$加法性($σ$-additivity): 重複のない加算個の区間の和集合が集合半環の要素なら、長さ関数mを導入すると、その和集合の長さが区間の長さの総和と一致すること、つまり

$$ \bigcup_{k=1}^{\infty}I_{k} \in \mathfrak{S}_{m} \implies m\left(\bigcup_{k=1}^{\infty}I_{k}\right) = \sum_{k=1}^{\infty}m(I_{k}) $$

  • ↑の命題は一般の区間列では成り立たないことに注意が必要
  • (σの由来は総和記号のシグマから?※)
  • $σ$-加法測度($σ$-additive measure)or 可算測度(countable measure): 長さ関数mの中で非負性と$σ$加法性を満たすもの
  • 測度(measure): 長さのこと
  • 有限加法性(finite additivity): $σ$加法性の有限個版
  • 単調性(monotonicity): 区間Iが区間Jの部分集合なら、Iの長さはJ以下、つまり $I \subset J \implies m(I) \leq m(J)$
  • $σ$-劣加法性($σ$-subadditivity)や可算劣加法性(countable subadditivity): 重複を許した区間の長さの総和は、その和集合の長さ以上であること、つまり $$m(I) \leq \sum_{k=1}^{\infty} m(I_{k})$$

  • 区間塊(figure)or 基本集合(elementary set): 有限個の区間の和集合で、ジャンプを許したもの

  • 区間塊すべてを集めてできる集合族を $\mathfrak{R}(\mathfrak{S}_{m})$ と表記する
  • 任意の区間区間塊でもあるので、 $\mathfrak{S}_{m} \subset \mathfrak{R}(\mathfrak{S}_{m})$ が成り立つ
  • 区間塊の集合族は集合環
  • 区間塊の集合族 $\mathfrak{R}(\mathfrak{S}_{m})$ は、区間の集合族 $\mathfrak{S}_{m}$ を部分集合として含む集合環の中で最小のもの、言い換えると $\mathfrak{S}_{m}$ から生成される最小環。
  • より幅広いものでは実数全体のべき集合 $2^{\mathbb{R}}$ などがあるが、議論の範囲はできるだけ狭めたほうがやりやすいためこちらのほうがよい
  • 区間塊はそのままだと長さを導けないので、長さ関数mを拡張し、互いに素な有限個の区間に分割したうえでそれらの長さの総和をその区間塊Aの長さとして取り扱う。つまり以下のようになる

$$ \hat{m}(a) = \sum_{k=1}^{n} m(I_{k}) $$

  • しかしこれでもまだ、区間塊しか長さを計算出来ないので、さらに拡張する。区間塊とは限らない点集合Aを加算個の区間列{Ik}で覆うものとし、その下限を導出する、つまり

$$ \mu^{*}(A)=\inf \left\{ \sum_{k=1}^{\infty} m(I_{k}) \ \left| \ A \subset \bigcup_{k=1}^{\infty} I_{k}, I_{k} \in \mathfrak{S}_{m} \right. \right\} $$

  • ただし、Aが有界でない場合は正の無限大とする。2つ合わせて

$$\displaystyle \displaylines{ \mu^{*}(A)= \begin{cases} \displaystyle \inf \left\{ \sum_{k=1}^{\infty} m(I_{k}) \ \left| \ A \subset \bigcup_{k=1}^{\infty} I_{k}, I_{k} \in \mathfrak{S}_{m} \right. \right\} & \text{(if A is bounded)} \\
+\infty & \text{(if A is not bounded)} \end{cases} }$$

  • これで任意の点集合に対して長さを定義できるようになった。この関数 $\mu^{*}: 2^\mathbb{R} \to \mathbb{R}$ をカラテオドリ拡張(Carathéodory extension)やルベーグ外測度(Lebesgue outer measure)という。wiisではルベーグ外測度の名を採用する
  • 有限集合や加算集合のルベーグ外測度は0
  • ルベーグ外測度が0の集合を零集合(null set)という
  • 移動不変性(translation invariant): 数直線上で集合を平行移動させても外測度が変わらないこと
  • 外測度(outer measure): ベキ集合から実数への写像 $\mu^{*}: 2^{X} \to \mathbb{R}$ が、非負性・単調性・$σ$-劣加法性を満たし、$\phi$を与えると0が返ってくるもの。ルベーグ外測度も外測度に該当する
  • ただし、外測度には$σ$加法性が含まれておらず、このままだと外測度が実際の長さより多く出ている可能性を否定できない。かといって、定義域を $\mathfrak{R}(\mathfrak{S}_{m})$ にまで縮小してしまうと区間塊しか外測度を計測できない。できるだけ広い範囲を定義域に持ちつつ、$σ$加法性を導入したい。
  • ルベーグ可測(Lebesgue measurable): 実数上のある集合Aと任意の集合Sに対して、以下が成り立つこと $$\mu^{*}(S)=\mu^{*}(S \cap A) + \mu^{*}(S \cap A^{c}) $$
  • ↑の条件をカラテオドリの条件(Carathéodory’s criterion)という
  • ルベーグ可測集合族(family of Lebesgue measurable sets)$\mathfrak{M}_{\mu^{*}}$: ルベーグ可測な集合をすべて集めてできる部分集合族
  • カラテオドリの条件には、これと必要十分な言い換えの表現が存在する
    • $B \subset A \land B' \subset A^{c}$ のとき、 $\mu^{*}(B \cup B') = \mu^{*}(B) + \mu^{*}(B')$
    • $\mu^{*}(S) \geq \mu^{*}(S \cap A) + \mu^{*}(S \cap A^{c})$
  • $σ$-代数($σ$-algebra): 部分集合族が空集合を要素に持ち、補集合と加算合併について閉じていること。ルベーグ可測集合族はこれに該当
  • 開集合系 $\mathcal{O}$、閉集合系 $\mathcal{A}$、区間塊集合族 $\mathfrak{R}(\mathfrak{S}_{m})$ はそれぞれルベーグ可測、つまり $\mathcal{O} \subset \mathfrak{M}_{\mu^{*}}, \mathcal{A} \subset \mathfrak{M}_{\mu^{*}}, \mathfrak{R}(\mathfrak{S}_{m}) \subset \mathfrak{M}_{\mu^{*}}$
  • ルベーグ測度(Lebesgue measure): ルベーグ外測度をルベーグ可測集合族に縮小して得られる写像 $\mu: \mathfrak{M}_{\mu^{*}} \to \mathbb{R}$
  • ルベーグ測度は$σ$加法性を持つので、これによって実際の長さと一致することが保証される
  • 連続性(continuity): 以下の性質を満たすこと

$$ \mu \left(\bigcup_{k=1}^{\infty}A_{k}\right) = \lim_{k \to \infty} \mu(A_{k}) $$

  • ↑で $\bigcup$ を $\bigcap$ に置き換えたものもまた連続性と呼ばれる
  • 可測集合$A \subset \mathfrak{M}_{\mu}$ の任意の点aで命題P(x)が成り立つか検討する際、Aの部分集合である零集合Bがあって、このBを除いたすべての点で命題P(x)が成り立つとき、つまり $\forall a \in A \setminus B: P(x)$ が成り立つとき、P(x)はAのほとんどいたるところ(almost everywhere)で成り立つという
  • ルベーグ可測でないものの例: 2つの値の差が同じ有理数であるものを同値関係として定義して、その同値関係による商集合から1つずつ選択して集めた集合など
  • ヴィタリ被覆(Vitali Cover): 部分集合X上の部分集合族 $\mathcal{V}$ がヴィタリ被覆であるとは、その要素がどれもが長さが正の有界区間であり、かつどの点をとっても、その点を含むいくらでも長さが小さい正の区間を作れること、つまり

$$\displaylines{ \begin{align} &(a) \ \mathcal{V} \in I([a,b]) \\
&(b) \ \forall \varepsilon > 0, \forall x \in X, \exists I \in \mathcal{V}: [x \in I \land \mu(I) < \varepsilon] \end{align} }$$

  • $\mathbb{R}$ の部分集合は必ずヴィタリ被覆を持つ
  • ヴィタリの被覆補題(Vitali covering lemma): ヴィタリ被覆の中から有限個の互いに素な区間を選んで、それを集合Xから引く(差集合を取る)ことで、いくらでも小さい区間をつくることができる、つまり $$ \mu^{*}\left(X \setminus \coprod_{i=1}^{n}I_{i} \right) < \varepsilon $$ ただし、ここで $\coprod$ は $\bigcup$ の互いに素バージョン
  • ボレル集合族(family of Borel sets)$\mathfrak{B}$ : 開集合系 $\mathcal{O}$ を部分集合族として持つ$σ$代数をすべてあつめてできる集合族 $\{ \mathfrak{B}_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$ の共通部分 $$ \mathfrak{B} = \bigcap_{\lambda \in \Lambda} \mathfrak{B}_{\lambda} $$
  • ボレル集合族は、開集合系 $\mathcal{O}$ から生成される最小の $σ$-代数(minimal $σ$-algebra generated by $\mathcal{O}$ )でもある
  • $\mathfrak{B} \subset \mathfrak{M}_{\mu}$ なので、任意のボレル集合はルベーグ可測
  • ボレル集合の例:任意の開集合、任意の閉集合、任意の右半開区間 $\mathfrak{S}_{m}$ 、任意の区間塊 $\mathfrak{R}(\mathfrak{S}_{m})$ 、近傍系 $\mathcal{N}$
  • $\mathcal{N} \subset \mathcal{O} \subset \mathfrak{B}$
  • $\mathcal{N} $ を部分集合として持つ $σ$-代数をすべてあつめた部分集合族 $\{\mathfrak{A}_{\lambda}\}_{\lambda \in \Lambda}$ の共通部分 $σ(\mathcal{N})$ を取ると、これはボレル集合族と一致するので、ボレル集合族は近傍系 $\mathcal{N}$ から生成される最小の$σ$代数でもあるので、ボレル集合の定義には $\mathcal{N}$ を使えば十分
  • ボレル測度(Borel measure)$\mu: \mathfrak{B} \to \mathbb{R} \cup \{\pm\infty\}$: ルベーグ測度の定義域をボレル集合族にしたもの
  • 定義域を縮小したので、ボレル測度はルベーグ測度の特徴を引き継ぐ。加法性・単調性・連続性・劣加法性など
  • 以上の議論は拡大実数空間上でも構築することができる
  • カントール集合(Cantor set): 区間 $C_{0}=[0,1]$ を用意し、3等分して真ん中を除去し($C_{1}$)、残った2つの区間をそれぞれ3等分してそれぞれ真ん中を除去する($C_{2}$)、というプロセスを無限に繰り返すことで生成されていく集合列 $\{C_{n}\}$ の共通部分のこと、つまり $$\mathcal{C}=\bigcap_{n=1}^{\infty}C_{n}$$
  • 3進展開(ternary expansion)した数値が取りうる値すべてを集めた数列から、10進小数への写像 $F:\{0,1,2\}^{\mathbb{N}} \to [0,1]$ は全射になる、つまりすべての小数は3進展開可能
  • 逆に、↑は単射ではない、つまり3進展開は一意的ではないので、同じ数値に対して異なる3進展開が存在するが、その異なる3進展開の中で最初に違う数字が登場する桁に注目すると、その異なった数字のどちらかは1であることが保証される
  • ↑の対偶を取ると、0と2だけで構成するならば3進展開は一意的
  • カントール集合は、測度が0だが非加算集合である代表例
  • ルベーグ可測(Lebesgue measurable): ルベーグ可測集合族の測度空間 $(\mathbb{R}, \mathfrak{M}_{\mu})$ からボレル集合族の測度空間 $(\mathbb{R}, \mathcal{B}(\mathbb{R}))$ への関数を考えたとき、その逆像が可測であること、つまり $$ \forall B \in \mathcal{B}: f^{-1}(B) \in \mathfrak{M}_{\mu} $$

  • または、$σ(\mathcal{A})=\mathcal{B}(\mathbb{R})$ である集合族 $\mathcal{A} \subset 2^{\mathbb{R}}$ を用いて、 $$ \forall B \in \mathcal{A}: f^{-1}(B) \in \mathfrak{M}_{\mu} $$ としても同じ

  • 一例として、ボレル集合族は開集合系から生成される、すなわち $σ(\mathcal{O}(\mathbb{R}))=\mathcal{B}(\mathbb{R})$ なので、 $$ \forall B \in \mathcal{O}(\mathbb{R}): f^{-1}(B) \in \mathfrak{M}_{\mu} $$ といえる
  • ルベーグ可測集合上に定義された関数fがルベーグ可測関数であることと、 $$ \forall x \in \mathbb{R}: f^{-1}( (x, +\infty)) \in \mathfrak{M}_{\mu} $$ が成り立つことは必要十分
  • ↑は、xと無限大の正負反転させても、x側を閉区間/開区間を変えても成り立つ
  • ボレル可測(Borel measurable): ルベーグ可測の条件の定義域をボレル集合族の測度空間にしたもの、つまり $(\mathbb{R}, \mathcal{B}(\mathbb{R}))$ から $(\mathbb{R}, \mathcal{B}(\mathbb{R}))$ への関数の逆像が可測であること、すなわち $$ \forall B \in \mathcal{B}(\mathbb{R}): f^{-1}(B) \in \mathcal{B}(\mathbb{R}) $$
  • ルベーグ可測と同様、ボレル可測も以下とそれぞれ必要十分 $$\displaylines{ \forall B \in \mathcal{A}: f^{-1}(B) \in \mathcal{B}(\mathbb{R}) \\
    \forall B \in \mathcal{O}(\mathbb{R}): f^{-1}(B) \in \mathcal{B}(\mathbb{R}) \\
    \forall x \in \mathbb{R}: f^{-1}( (x, +\infty)) \in\mathcal{B}(\mathbb{R}) }$$
  • ボレル可測ならルベーグ可測だが、逆は成り立つとは限らない
  • ルベーグ可測、ボレル可測ともに拡大実数値の範囲に拡張可能
  • ルベーグ測度空間 $(\mathbb{R}, \mathfrak{M}_{\mu}, \mu)$ が完備(complete)であることとは、零集合になるルベーグ可測集合を任意に選んだ時、その部分集合もルベーグ可測であること
  • ルベーグ可測関数とほとんといたるところで等しい関数はルベーグ可測関数。つまり関数fとgがあって、それらのX上で異なる点を集めた集合 $A=\{x \in X \mid f(x) \neq g(x) \}$ の測度が0 $\mu(A)=0$ であり、それ以外が一致している $\forall x \in X \setminus A: f(x)=g(x)$ 場合、gもルベーグ可測
  • 拡大実数値関数fにおいて、値が正または負の無限大になる点の数が高々加算個である場合、それを有限な値に置き換えた関数gを用意すると、gはfとほとんといたるところで等しいためルベーグ可測関数になる
  • 同じように考えると、拡大実数値関数fの定義域Xにおいて、定義されていない点が高々加算個である場合、それらを任意の値に置き換えた関数gを用意すると、gはfとほとんといたるところで等しいためルベーグ可測関数になる
  • ルベーグ測度空間 $(\mathbb{R}, \mathfrak{M}_{\mu}, \mu)$ が完備だったが、ボレル測度空間 $(\mathbb{R}, \mathcal{B}(\mathbb{R}), \mu)$ は完備ではない
  • ルベーグ可測集合上に定義された関数が連続なら、ルベーグ可測関数
  • ボレル集合上に定義された関数が連続なら、ボレル可測関数
  • ボレル可測関数同士の合成関数はボレル可測だが、ボレル可測関数とルベーグ可測関数の合成関数はルベーグ可測関数
  • 連続関数と合成する場合、ルベーグ可測関数・ボレル可測関数は維持される
  • ルベーグ可測関数どうしの合成関数はルベーグ可測関数とはいえない
  • ルベーグ可測関数(ボレル可測関数)の単調・定数倍・和・差・積・商はルベーグ可測関数(ボレル可測関数)。ただし、拡大実数値関数の場合で不定形になる場合を除く
  • 可測関数の最大・最小・上限・下限は可測関数
  • 以下の命題に注意

$$\displaylines{ \lim_{n \to \infty} \sup f_{n} = \inf_{n \in \mathbb{N}} \sup_{k \geq n} f_{k} \\
\lim_{n \to \infty} \inf f_{n} = \sup_{n \in \mathbb{N}} \inf_{k \geq n} f_{k} }$$

  • 各点極限(pointwise limit)$f_{n} \xrightarrow{\text{p.w.}} f$: 各点収束関数の極限、つまり以下の式を満たす場合。 $$\forall x \in X: \lim_{n \to \infty} f_{n}(x)=f(x)$$
  • 可測関数列の各点極限は可測関数(ルベーグ・ボレルともに)
  • ほとんどいたるところで各点収束する可測関数列の各点極限は可測関数(ルベーグのみ)
  • 一様極限(uniform limit) $f_{n} \to f \text{ uniformly}$: 一様収束関数列の極限
  • 可測関数列の一様極限は可測関数
  • 関数列の一様有界(uniformly bounded)性: 関数列のすべての関数が固定の1つの値によって上界を定められること
  • カントール関数(Cantor function)$f: [0,1] \supset \mathcal{C} \to [0,1]$: 一意な3進展開を2進展開に変換したもの、つまり、各桁が0と2だけで表現された無限小数 $0.a_{1}a_{2}a_{2} \dots$ を以下のように扱うこと

$$0.{a_{1} \over 2}{a_{2} \over 2}{a_{3} \over 2} \dots$$

  • カントール関数は全射ではあるが単射ではない、つまり終集合 $[0,1]$ をすべて射抜いてはいるが、かぶりが存在する、例として、2つの3進展開 $$\displaylines{ 0.0222\dots \\
    0.2000\dots }$$ を2進展開に変換した結果 $$\displaylines{ 0.0111\dots \\
    0.1000\dots }$$ はどちらも ${1 \over 2}$ を指している

  • カントール関数は定義域が穴ぼこだらけで使いにくいので、定義域を $[0,1]$ まで拡張することを考える。既に定義されている点はそのまま使うとして、定義されていない点は、その点より小さいすべての値の集合の上限とするが、これはカントール集合の要素になるため、あわせて $$ F(x)= \begin{cases} \displaystyle f(x) & \text{if} x \in \mathcal{C} \\
    f(\sup \{x' \in \mathcal{C} \mid x' < x \}) & \text{if} x \in [0,1] \setminus \mathcal{C} \end{cases} $$ という関数を用意する。ややこしいが、これもカントール関数と呼ばれている

  • カントール集合を式で表せば

$$ \mathcal{C}=[0,1]\setminus \bigcup_{n=1}^{\infty} \bigcup_{k=0}^{3^{n-1}-1} \left({3k+1 \over 3^{n}},{3k+2 \over 3^{n}}\right) $$

  • カントール関数はほとんどいたるところで微分可能
  • 特性関数(characteristic function of the set A)or 指示関数(indicator function): 部分集合Aに含まれれば1、含まれなければ0とする関数、つまり

$$ \chi_{A}(x)= \begin{cases} \displaystyle 1 & (\text{if } x \in A) \\
0 & (\text{if } x \notin A) \end{cases} $$

  • 特性関数が可測であることと、元の集合が可測であることは必要十分
  • 和集合の特性関数は最大値と一致するが、特に非交和の場合は関数の足し算になる、つまり $$\displaylines{ \forall x \in \mathbb{R}: \chi_{A \cup B}(x) = \max\{\chi_{A}(x), \chi_{B}(x)\} \\
    \forall x \in \mathbb{R}: \chi_{A \sqcup B}(x) = \chi_{A} + \chi_{B} }$$

  • 単関数(simple function): ルベーグ可測かつ終集合の要素が有限個な関数。定数関数や特性関数、定義域の要素を有限個にした関数など

  • 単関数の標準形(canonical representation of the simple function): 単関数を総和で表してしまうこと。プログラミングの最適化っぽい雰囲気ある

$$ \left(\sum_{k=1}^{n}(a_{k} \cdot \chi_{\{f=a_{k}\}})\right)(x) $$

  • たとえば単関数 $f(x)=2x$ で定義域が $\{1,2,3\}$ であれば、値域は $\{2,4,6\}$ で、xに1を渡せば $2 \cdot 1 + 4 \cdot 0 + 6 \cdot 0 = 2$ で、他の値も同様に考えることで元の単関数と一致する
  • 単関数の定数倍・和は単関数
  • 単関数による近似補題(simple approximation lemma): ルベーグ可測で有界な関数のそれぞれの値に対して、上下から挟む単関数のペアが存在する、つまり

$$\displaylines{ \forall x \in X: L_{\varepsilon}(x) \leq f(x) \leq U_{\varepsilon}(x) \\
\forall x \in X: 0 \leq U_{\varepsilon}(x) - L_{\varepsilon}(x) < \varepsilon }$$

  • 単関数による近似定理(simple approximation theorem): 拡大実数値ルベーグ可測関数fに対して、単関数の関数列として、fに各点収束し、絶対値がf(x)の絶対値を超えない関数列gが存在する。追加で、fが非負値のみ取る場合、gは関数列として単調増加になる、つまり

$$\displaylines{ \forall x \in X: \lim_{n \to \infty}g_{n}(x)=f(x) \\
\forall n \in \mathbb{N}, \forall x \in X: |g_{n}(x)| \leq |f(x)| \\
\forall x \in X: g_{1}(x) \leq g_{2}(x) \leq \dots }$$

ルベーグ積分

  • ルベーグ積分(Lebesgue integral): 集合Xの値域の各点の値と、それに対応する定義域の測度の積を取り、それを全ての点で総和を取ったもの、つまり $$ \sum_{k=1}^{n} [a_{k} \cdot \mu(\{f=a_{k}\})] $$ を $$ \int_{X}f $$ と表記する
  • リーマン積分が縦切り積分なのに対し、ルベーグ積分は横切り積分と言っていい
  • 単関数 $|f|$ のルベーグ積分は、$f$ のルベーグ積分の絶対値以上になる、つまり

$$ \left|\int_{X}f\right| \leq \int_{X}|f| $$

$$ \overline{\int}_{X}f = \inf \left\{\int_{X}g\mid g \text{ is simple function satisfying } f \leq g \right\} $$

$$ \underline{\int}_{X}f = \sup \left\{\int_{X}g\mid g \text{ is simple function satisfying } f \geq g \right\} $$

$$ (L) \int_{[a,b]}f(x)=(R)\int_{a}^{b}f(x) $$

  • ↑の逆は成り立つとは限らない。ディリクレの関数など
  • 有界ルベーグ可測関数はルベーグ積分可能。ただし、有限測度を持つルベーグ可測集合上に定義されている必要がある
  • 有ル有ル関数列 $\{f_{n}\}$ が関数 $f$ に一様収束するとき、以下が成り立つ

$$ \lim_{n \to \infty} \int_{X} f_{n} = \int_{X}\lim_{n \to \infty} f_{n} = \int_{X} f $$

  • ↑で、各点収束の場合は一般に成り立たない、ただし各点収束であっても一様有界ならば成り立つ
  • 台(support): 値域が非ゼロになる定義域の集合

$$ \text{supp }f(x)=\{x \in\mathbb{R} \mid f(x)\neq 0\} $$

  • 有限な台(finite support): 台の測度が有限であること。 $\mu(\text{supp }f) < +\infty$
  • 関数が非負値のみを取る場合、その積分の値はその台の積分と一致する、つまり

$$ \int_{X}f=\int_{\text{supp }f} f $$

  • 非負値を取るルベーグ可測関数の定数倍は、0のとき不定形になるので定義できない
  • 和は分解できるが、差は同様に不定形が現れるので定義できない
  • チェビシェフの不等式(Chebychev’s Inequality): 任意の正の実数cをとると、関数の値域でc以上になる部分の定義域の測度は、cの逆数とルベーグ積分の積と同じかそれ以下である、つまり

$$ \mu(f^{-1}([c,+\infty])) \leq {1 \over c} \cdot \int_{X}f $$

$$ \int_{X}f \leq \lim_{n\to\infty}\inf\int_{X}f_{n} $$

  • ↑はすべての点でなく、ほとんどいたるところで定義されている場合でも同様の主張が成り立つ
  • ↑で等号が成立するのは、関数列が単調増加のとき。これを単調収束定理(monotone converge theorem)という。この定理も、定義されている点がほとんどいたるところであってもよい
  • ルベーグ可測関数列のルベーグ積分列が正の無限大に収束することを特定する方法… 関数列がほとんどいたるところで収束する関数fを特定し、そのルベーグ積分が正の無限大になることを確認する
  • ↑が有限な実数値になる場合ルベーグ積分可能であるといえる
  • 区間の端点で無限大になるルベーグ積分は、広義リーマン積分と一致
  • 定義域が任意の数を取る場合でも同様に広義リーマン積分と一致
  • 正成分(positive part): 負の部分を0にしたもの、 $f^{+}(x)=\max\{f(x),0\}$
  • 負成分(negative part): 関数を反転させて元が負だった成分だけ正として取り出すこと、 $f^{-}(x)=\max\{-f(x),0\}$
  • $f=f^{+}-f^{-}$
  • 定数倍したときに不定形が現れると定義できないが、そもそもルベーグ積分可能な関数は、そういった点の集まりが零集合なので、それらを取り除いて計算しても結果が変わらないのでこれで解決可能
  • 和や差で不定形が出ても同様にする
  • 比較判定法(integral comparison test): ルベーグ積分可能かどうか判定したい関数fがあるとき、これとは別のgを想定し、そのgが非負を値にとって、gのルベーグ積分が有限な実数に定まり、なおかつfの絶対値と同じかそれよりgのほうが大きい場合、つまり $\forall x \in X: |f(x)| \leq g(x)$ のとき、fはルベーグ積分可能
  • ルベーグの支配収束定理(lebesgue dominated convergence theorem): 有限測度を持つとは限らないルベーグ可測関数列fnがfに各点収束し、 $\forall n \in \mathbb{N}: |f_{n}|\leq g$ を満たすルベーグ積分可能な関数gが存在する場合、fはlimとintを入れ替えてもよい、つまり

$$ \lim_{n\to\infty} \int_{X} f_{n} = \int_{X}\lim_{n\to\infty} f_{n} = \int_{X} f $$

  • ↑は各点収束でなくてほとんどいたるところで収束でも同様の主張が成り立つ
  • 一様可積分(uniformly integrable): ルベーグ可測関数族 $\mathcal{F}$ が以下の条件を満たすこと

$$ \forall \varepsilon > 0, \exists \delta > 0, \forall f \in \mathcal{F}, \forall A \in \mathfrak{M}_{\mu}: \left( A \subset X \land \mu(A)<\delta \implies \int_{A}|f| < \varepsilon \right) $$

  • ヴィタリの収束定理(Vitali convergence theorem): 関数列fnが一様可積分であり、Xが有限測度を持ち、fnがfに各点収束する場合、fはルベーグ積分可能で、以下も成り立つ

$$ \lim_{n\to\infty}\int_{X}f_{n}=\int_{X}f $$

  • ↑は、ルベーグの支配収束定理と同じことを言っていて、支配関数gの特定が不要になっていて、より導出が簡単になっている
  • 緊密(tight): ル拡ル関数がX上で緊密であることは、以下が成り立つことを意味する

$$ \forall \varepsilon > 0, \exists A \in \mathfrak{M}_{\mu}: \left( A \subset X \land \mu(A) < +\infty \land \int_{X\setminus A}|f| < \varepsilon \right) $$

  • ↑なんかコンパクト集合と雰囲気近い概念?
  • 一様緊密(uniformly tight): 関数列の要素の関数全てが、事前に固定された任意の $\varepsilon$ を使ってどれも緊密の条件を満たすこと
  • 一般化されたヴィタリの収束定理(general Vitalli convergence theorem): ルXが有限測度を持たない場合であっても、一様可積分かつ一様緊密でfに各点収束すれば、前述のヴィタリの収束定理が成り立つ

ディニ微分

  • 上ディニ微分係数(upper Dini differential coefficient): 点aにおいては

$$\displaylines{ \begin{align} \overline{D}f(a)&=\lim_{h\to 0+}\sup{f(a+h)-f(a)\over h} \\
&= \lim_{\delta\to 0+}\sup\left\{ {f(a+h)-f(a)\over h} \in \mathbb{R} \mid h \in (-\delta,0) \cup (0,\delta) \right\} \end{align} }$$

  • 下ディニ微分係数(lower Dini differential coefficient): 点aにおいては

$$\displaylines{ \begin{align} \underline{D}f(a)&=\lim_{h\to 0-}\inf{f(a+h)-f(a)\over h} \\
&= \lim_{\delta\to 0+}\inf\left\{ {f(a+h)-f(a)\over h} \in \mathbb{R} \mid h \in (-\delta,0) \cup (0,\delta) \right\} \end{align} }$$

  • ディニ微分は、関数が連続でなくても定義できるのがメリット。ただし、hが分母にくると有界ではなくなり、ディニ微分であっても定義できなくなる点に注意
  • 上ディニ微分係数と下ディニ微分係数が一致するとき微分可能であり、通常の微分係数とも一致する、つまり $f'(a)=\overline{D}f(a)=\underline{D}(a)$
  • 右上ディニ微分係数(upper right Dini differential coefficient)

$$\displaylines{ \begin{align} D^{+}f(a)&=\lim_{h\to 0+}\sup{f(a+h)-f(a)\over h} \\
&= \lim_{\delta\to 0+}\sup\left\{ {f(a+h)-f(a)\over h} \in \mathbb{R} \mid h \in(0,\delta) \right\} \end{align} }$$

  • 左上ディニ微分係数(upper left Dini differential coefficient)

$$\displaylines{ \begin{align} D^{-}f(a)&=\lim_{h\to 0-}\sup{f(a+h)-f(a)\over h} \\
&= \lim_{\delta\to 0-}\sup\left\{ {f(a+h)-f(a)\over h} \in \mathbb{R} \mid h \in(-\delta, 0) \right\} \end{align} }$$

  • 右下ディニ微分係数(lower right Dini differential coefficient)

$$\displaylines{ \begin{align} D_{+}f(a)&=\lim_{h\to 0+}\inf{f(a+h)-f(a)\over h} \\
&= \lim_{\delta\to 0+}\inf\left\{ {f(a+h)-f(a)\over h} \in \mathbb{R} \mid h \in(0,\delta) \right\} \end{align} }$$

  • 左下ディニ微分係数(lower right Dini differential coefficient)

$$\displaylines{ \begin{align} D_{-}f(a)&=\lim_{h\to 0-}\inf{f(a+h)-f(a)\over h} \\
&= \lim_{\delta\to 0-}\inf\left\{ {f(a+h)-f(a)\over h} \in \mathbb{R} \mid h \in(-\delta, 0) \right\} \end{align} }$$

  • 単調増加関数の区間[a,b]での、上微分係数がc以上の集合の外測度は、端点の像の差をcで割った数以下である、つまり

$$ \mu^{*}\left(\left\{ x \in [a,b] \mid c \leq \overline{D}f(x) \leq +\infty \right\}\right) \leq {1 \over c} [f(b)-f(a)] $$

  • ↑を使うと、上微分係数が正の無限大になる集合の外測度は0、つまり

$$ \mu^{*}\left(\left\{ x \in [a,b] \mid \overline{D}f(x) = +\infty \right\}\right) =0 $$

  • 言い換えると、ほとんどいたるところで上微分係数は有限、つまり $\overline{D}f < \infty$
  • 以上の議論は単調減少関数と下微分係数のペアでも成り立つ
  • さらに、上微分係数は右上、左上で、下微分係数は右下、左下でそれぞれ同じ命題が成り立つ
  • 単調増加関数が微分可能でないのは、上微分係数が正の無限大になるか、上微分係数と下微分係数が異なる有限の実数になるとき、つまり

$$ \left\{ x \in (a,b) \mid \overline{D}f(x) = +\infty \right\} \cup \left\{ x \in (a,b) \mid 0 \leq \underline{D}f(x) < \overline{D}f(x) < +\infty \right\} $$

  • ↑は零集合になるので、単調増加関数はほとんどいたるところで微分可能
  • 単調減少関数でも同様の主張が成り立つので、あわせて、単調関数であればほとんどいたるところで微分可能。これをルベーグの定理(Lebesgue’s theorem)という
  • ルベーグの定理が成り立つので、なんらかの零集合Aを除けば任意の単調関数で導関数が定義できて、その値はリーマン積分と同じかそれ以下であることが保証される、つまり

$$ \int_{(a,b)\setminus A}{df \over dx} \leq f(b)-f(a) $$

  • 等号ではない例:カントール関数など
  • ジョルダンの定理と組み合わせて、任意の有界変動関数はほとんどいたるところで微分可能
  • (※ジョルダンの定理/Jordan’s theoremでググると、閉曲線定理ばかり出てきて、任意の有界変動関数はある2つの単調増加関数の差で表せることを示す資料が見つからない。なぜ?)
  • 有界変動関数ならば、その導関数からある零集合Aを除いたルベーグ積分は、全変動と同じかそれ以下、つまり

$$ \int_{[a,b]\setminus A} \left|{df \over dx}\right| \leq \text{TV}(f,[a,b]) $$