wiisメモ(距離空間~1変数関数の微分)
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距離空間
距離空間
- 写像 $d:X \times X \to \mathbb{R}$ が以下の4つの公理を満たすとき、距離関数(distance function)or 距離(metric)と呼ぶ
- 非負性(non-negativity): $\forall x,y \in X: d(x,y) \geq 0$
- 不可識別者同一性(identity of indiscernibles): $\forall x,y \in X: [d(x,y)=0 \Leftrightarrow x=y$]
- 対称性(symmetry): $\forall x,y \in X: d(x,y)=d(y,x)$
- 三角不等式(triangle inequality): $\forall x,y,z \in X: d(x,z) \leq d(x,y) + d(y,z)$
- 距離空間の例としてはユークリッド空間、絶対値距離、ノルム空間など
- 以下の距離を使って定義される距離空間を離散距離空間(discrete metricspace)or 自明な距離空間(trivial metric space)という
$$
\begin{eqnarray}
d(x,y) =
\begin{cases}
0 \quad (\mathrm{if} \ x=y) \\
1 \quad (\mathrm{if} \ x \neq y)
\end{cases}
\end{eqnarray}
$$
$$ d(x,y) = \sum_{i=1}^{n} |x_{i} - y_{i}| $$
$$ d(x,y) = \max \{ |x_{1} - y_{1}|, |x_{2} - y_{2}|, \dots , |x_{n} - y_{n}| \} $$
- 関数の差の定積分も距離空間にできる。具体的には、 $[a,b]$ 上に定義される連続な関数全体を $C[a,b]$ とすると、関数$f,g \in C[a,b]$ を取った時に、距離の公理を満たす以下の写像dが定義できる
$$ d(f,g) = \int_{a}^{b}|f-g|(x)dx $$
↑を $(C[a,b],d)$ を表記する
無限級数 $$\displaystyle \displaylines{ \sum_{n=1}^{\infty} x_{n}^{2} \\
\sum_{n=1}^{\infty} y_{n}^{2} } $$ がともに有限な実数に収束する場合、 $$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} (x_{n} - y_{n})^{2} $$ をヒルベルト距離(Hilbert distance)といい、それらで作られた空間 $(\mathbb{R}^{\infty},d)$をヒルベルト空間(Hilbert space)という標準有界距離(standard bounded metric): $e(x,y) = \min\{1, d(x,y)\}$
- その他、$e(x,y) = \frac{d(x,y)}{1+d(x,y)}$ や $d(f,g) = \sup\{|f-g|(x) \in \mathbb{R}\ | \ x \in [a,b]\}$ など、距離空間は自由に作成できる
- 部分距離空間(metric subspace): $d_{A}(x,y) = d(x,y)$ となる $A$ のこと。定義が一致する、あるいは計算の結果同じ式が導かれるのでなければ部分距離空間とは言わない
- 部分集合同士の距離は、2つの部分集合から1点ずつ取った2点間の距離の中で最短のものを採用する。最小値があるとは限らないので、infで定義する
$$ d(A,B) = \inf\{d(a,b) \in \mathbb{R} \ | \ a \in A \land b \in B\} $$
- 集合同士の距離について、非負性と対称性は成り立つが、不可識別者同一性と三角不等式は成り立たない(範囲が被った場合)
距離空間上の点列
- ユークリッド距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離の場合、点列の収束と各要素の座標数列が収束することは必要十分
- 一方、どの距離であっても、部分列が収束するのであれば元の点列も収束する
- ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理(収束しない点列でも、有界であれば収束する部分列を持つ)は、任意の距離空間では成り立たない(離散距離空間など)
- そのため、任意の距離空間上でコーシー列が収束するとは限らないが、逆に、距離空間上の任意のコーシー列が収束する場合、その距離空間を完備である(complete)という
距離空間の位相
- ある集合が開集合かどうかは、距離空間によっても変わる
- ここで開集合が開区間の直感から外れる例が出てくる。ユークリッド距離空間においては、開集合の定義の近傍に使う関数がユークリッド距離関数なので、閉区間を考えるとその端点で近傍を取った時に、どんな$\varepsilon$をとってもその部分集合以外の要素を含んでしまうため開集合ではなくなってしまう、つまり開集合ではない集合も存在するという直観的な状態だが、離散距離空間においては、任意の部分集合の中のどの点をとっても、そこで使用する距離関数が離散距離関数のため、その部分集合である自分自身の点だけを含むような距離 $0 < \varepsilon \leq 1$ をいつでもとることができ、その部分集合に含まれない点のない、不純物のない集合を作り出すことができる、つまり離散距離空間においては、すべての集合が開集合となる
微分積分
1変数関数の微分
$$\displaystyle \lim_{x \to a} \frac{f(x)}{g(x)} = 0 $$
点aでfはgと比べて無視できる(f is negligible in comparison to g)といい、以下のように書く $$ f(x) = o(g(x)) \quad (x \to a) $$ または $$ f(x) \ll g(x) \quad (x \to a) $$
- またこのとき、oのことをランダウのオー(Landau’s little o)という
- 通常の極限を表すのに使われる以下が成り立つとき、fはaで無限小(infinitesimal)であるという
$$\displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = 0 $$
また、関数fとgが点aで無限小で、かつfがgと比べて無視できる場合、つまり $$\displaylines{ \lim_{x \to a} f(x) = 0 \\
\lim_{x \to a} g(x) = 0 \\
f(x) = o(g(x)) \quad (x \to a) }$$ がすべて成り立つとき、fはgよりも高位の無限小(infinitesimal of higher order)であるという計算により、 $$\displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(a) - f'(a) \cdot h}{h} = 0 $$ が成り立つので、分母分子をそれぞれ関数とみなせば、 $f(x+h) - f(a) - f'(a) \cdot h$ は $h$ と比べて無視でき、どちらも無限小なので、高位の無限小であることがわかる。つまり $$ f(a+h) - f(a) - f'(a) \cdot h = o(h) \quad (h \to 0) $$
すなわち、関数fが点aで微分可能でありさえすれば、自動的に↑の式を満たす $f'(a)$ が有限な実数として存在することが確定する
さらに、$x=a+h$ とすると、 $h=x-a$ であることも踏まえ、以下を得る $$ f(x) - f(a) - f'(a) \cdot (x-a) = o(x-a) \quad (x \to a) $$
↑の式の意味するところは、xからaに近づけるときに、$f(x)$ と $f(a) - f'(a) \cdot (x-a)$ の差が限りなく0に近づく上に、$x$と$a$の差と比べて無視できるということ、つまり以下の近似が可能になることを示す(近似できるということは、近づける変数より高次の無限小であることが条件?)
$$ f(x) \approx f(a) + f'(a) \cdot (x-a) $$
- ↑を、1次の近似多項式(1st degree approximating polynomial)という
- また、同様に $f(a + \Delta x) - f(a) \approx f'(a) \cdot \Delta x$ とも書けて、この右辺を増分の主要部分(main part)またはfのaにおける微分(differential)といい、$df$ と表記する
- さらに、$dx = \Delta x$ を使って主要部分を書き換えると、よく見る以下の式を得る
$$ f'(x) = \frac{df}{dx} $$
- ↑は微分商(differential quotient)と呼ばれる
- 右側微分係数(right-hand differential coefficient): $f'(a+0)$, $f_+'(a)$ などのように書く。左側も+を-にして同様に書く
- 右側微分係数と左側微分係数が両方存在するとき、片側微分可能(one-sided differentiable)or 半微分可能(semi-differentiable)という
- 右側導関数(right-hand derivative)と左側導関数(left-hand derivative)をあわせて片側導関数(one-sided derivative)という
- 微分可能なら連続だが、逆は成り立たない。また片側微分可能なら片側連続だが、逆は成り立たない
- 2つの関数の組み合わせの微分について、和や差はそのまま分割できるが、積は以下のように分割しなければならないので注意
$$ (f \cdot g)'(a) = f'(a) \cdot g(a) + f(a) \cdot g'(a) $$
- 商の場合はさらに複雑で、以下のようになる
$$ \left( \frac{f}{g} \right)'(a) = \frac{f'(a) \cdot g(a) - f(a) \cdot g'(a)}{[g(a)]^2} $$
合成関数の微分は $$ (g \circ f)'(a) = g'(f(a)) \cdot f'(a) $$ だが、↑の証明に微分の定義の高位の無限小を用いる
さらに、以下を連鎖公式(chain rule)という
$$
\displaylines{
\begin{eqnarray}
(g \circ f)'(x) &=& g'(f(x)) \cdot f'(x) \\
&=&\left. \frac{d}{dy}g(y) \right|_{y=f(x)} \cdot \frac{d}{dx}f(x)
\end{eqnarray}
}$$
- 3つ以上の合成関数も同様に
$$
\displaylines{
\begin{eqnarray}
(h \circ g \circ f)'(x) &=& h'(g(f(x)) \cdot g'(f(x)) \cdot f'(x) \\
&=&\left. \frac{d}{dz}h(z) \right|_{z=g(f(x))} \cdot \left. \frac{d}{dy}g(y) \right|_{y=f(x)} \cdot \frac{d}{dx}f(x)
\end{eqnarray}
}$$
関数fの微分は求めにくいが、その逆関数の微分なら求めやすいという場合はそれを使って元の関数fの微分を求めることもできる。具体的にはfが単射で連続で、逆関数が微分可能で微分係数が $$ \frac{df^{-1}(f(a))}{dy} = \left. \frac{df^{-1}(y)}{dy} \right|_{y=f(a)} \in \mathbb{R} \setminus \{0\} $$ のとき、元の関数fも点aで微分可能で、微分係数はその逆数で、以下のようになる $$ \frac{df(a)}{dx} = \frac{1}{\frac{df^{-1}(f(a))}{dy}} = \frac{1}{\left. \frac{ df^{-1}(y)}{dy} \right|_{y=f(a)}} $$
自然指数関数の微分は元の関数と同じ、つまり $f(x) = e^{x}$ のとき、 $f'(x) = e^{x}$
- 一般の指数関数の微分は、 $f(x) = a^{x}$ で$a > 0 \land a \neq 1$のとき、 点bの微分は$f'(b) = a^{b} \cdot \ln (a)$
- 自然対数の微分は、 $f(x) = \ln(x)$ のとき、 点aで微分すると $f'(a) = \frac{1}{a}$ (これを導くのに、すぐ上の逆関数の微分の原理を使うと便利)
- 一般の自然対数の微分は、 $f(x) = \log_{a}(x)$ で$a > 0 \land a \neq 1$のとき、対数法則から $f(x) = \frac{\ln(x)}{\ln(a)}$ なので、 点bで微分すると
$$ f'(b) = \frac{1}{b \cdot \ln(a)} $$
- 自然数ベキ関数の微分は、 $f(x) = x^{n}$ で $n \in \mathbb{N}$ のとき、多項式関数とみなせるので点aで微分すると $f'(a) = nx^{n-1}$
- 整数ベキ関数の微分は、$n \in \mathbb{N}$をもちいて $f(x) = x^{-n} = \frac{1}{x^{n}}$ と表せるので、 点aで微分すると
$$ f'(a) = -na^{-(n+1)} = -\frac{n}{a^{n+1}} $$
$$ f'(a) = \frac{1}{n} a^{\frac{1}{n}-1} $$
- 有理ベキ関数の微分は、$n \in \mathbb{N}, z \in \mathbb{Z}$ で $f(x) = x^{\frac{z}{n}}$ のとき、$f(x) = (x^{\frac{1}{n}})^{z}$ とみなせるので、0でない点aで微分すると、
$$ f'(a) = \frac{z}{n} a^{\frac{z}{n} - 1} $$
- 絶対値関数 $f(x) = |x|$ の微分は $f'(x) = \frac{x}{|x|}$
- $f(x) = \sin(x)$ のとき、 $f'(x) = \cos(x)$
- $f(x) = \cos(x)$ のとき、 $f'(x) = -\sin(x)$
- $f(x) = \tan(x)$ のとき、
$$ f'(x) = \frac{1}{\cos^{2}(x)} $$
- $f(x) = \mathrm{arcsin} (x)$ のとき、
$$ f'(x) = \frac{1}{\sqrt{1-a^{2}}} $$
- $f(x) = \mathrm{arccos} (x)$ のとき、
$$ f'(x) = -\frac{1}{\sqrt{1-a^{2}}} $$
$$ f''(a), f^{(2)}(a), \frac{d^{2}f(a)}{dx^{2}}, \frac{d^{2}}{dx^{2}}f(a), \left. \frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}} \right|_{x=a} $$
$$ (f \cdot g)^{(n)}(a) = \sum_{k=0}^{n} {}_{n}\mathrm{C}_{k} \cdot f^{n-k}(a) \cdot g^{k}(a) $$
- なお、wiisでは${}_{n}\mathrm{C}_{k}$ を $\binom{n}{k}$ と表記している
- これをライプニッツの公式(Leibniz rule)という
- ちなみに、Leibniz formulaのほうもライプニッツの公式と呼ばれ、以下を指すことがあるので注意
$$ 1 - \frac{1}{3} + \frac{1}{5} - \frac{1}{7} + \frac{1}{9} \dots = \frac{\pi}{4} $$
- 関数の微分可能性の文脈において級(class)という概念がある
- $C^{0}$級は、単に任意の点で連続であること
- $C^{1}$級は、任意の点で微分可能で、導関数が連続であること、言い換えると連続微分可能(continuously differentiable)であること
- $C^{n}$級は、任意の点でn階微分可能で、n階の導関数が連続であること、言い換えるとn階連続微分可能(n-th order continuously differentiable)であること
- $C^{\infty}$級は、無限階微分可能(infinitely continuously differentiable)であること
- fをm回微分する操作を $D^{m}$ と定め、単純微分作用素(simple differential operator)と呼ぶ。またこのときのmを次数(order)と呼ぶことにする
- 2つの単純微分作用素と2つの実数を任意に選んで定義される $E = c_{p}D^{p} + c_{q}D^{q}$ を微分作用素(differential operator)という
- ↑はつまり $Ef(x) = (c_{p}D^{p} + c_{q}D^{q})f(x)$
- ロルの定理(Rolle’s theorem): 関数$f:\mathbb{R} \supset [a,b] \to \mathbb{R}$ が、$[a,b]$上で連続で、$(a,b)$上で微分可能で、 $f(a)=f(b)$ のとき、$f'(c)=0$ を満たす $(a,b)$ 内の点cが必ず存在する
- ↑の点cを停留点(stationary point)という
- 狭義単調関数であれば逆関数の微分を考えることができるが、そうでないと逆関数が存在すると限らないので考えることができない
- しかし、狭義単調関数でなくても、任意の$C^{1}$級の関数において十分に小さな半径 $\varepsilon$ を取ることで、狭義単調な一部分だけ切り出して逆関数を考えることができる
$$ f:N_{\varepsilon}(a) \to f(N_{\varepsilon}(a)) $$
- ↑を逆関数定理(inverse function theorem)という
- ラグランジュの平均値の定理(Lagrange’s mean value theorem): 関数$f:\mathbb{R} \supset [a,b] \to \mathbb{R}$ が、$[a,b]$上で連続で、$(a,b)$上で微分可能なとき、$A(a,f(a)), B(b,f(b))$ と平行な接線が必ず存在する、つまり区間内の接線が増加量の平均値と一致する瞬間がある($\exists c \in (a,b): f'(c) = \frac{f(b)-f(a)}{b-a}$)ことを意味している
- ↑で$f(a)=f(b)$とするとロルの定理になる、つまりラグランジュの平均値の定理はロルの定理の一般化ともいえる
関数(追加)
絶対連続関数(absolutely continuous function)とは、以下の3つの条件を満たす有限部分集合族 $$\displaystyle \displaylines{ \begin{align} &(a) \ n \in \mathbb{N} \\
&(b)\ \forall i \in \{1, \dots , n\}: a \leq a_i \leq b_i \leq b \\
&(c)\ \forall i, j \in \{1, \dots , n\}: (i \neq j \Rightarrow [a_i,b_i] \cap [a_j,b_j] = \phi) \\
\end{align} }$$ $\{[a_i,b_i]\}$ について、以下が成り立つこと $$\displaystyle \forall \varepsilon, \exists \delta, \forall \{[a_i,b_i]\}_{i=1}^{n} \text{satisfying} (a), (b) \text{and} (c): \sum_{i=1}^{n} |b_i-a_i| < \delta \Rightarrow \sum_{i=1}^{n} |f(b_i)-f(a_i)| < \varepsilon $$リプシッツ関数(Lipschitz function)とは、以下の条件を満たす関数のこと
$$ \exists k \in \mathbb{R}, \forall x,y \in X: |f(y)-f(x)| \leq k|y-x| $$
- 関係性としては、リプシッツ関数なら絶対連続関数で、絶対連続関数なら一様連続関数で、一様連続関数なら連続だが、それぞれ逆は成り立たない
- $f(x) = \sqrt{x}$ は、絶対連続関数だがリプシッツ関数ではない
- $f(x) = x \sin (x)$ は、一様連続だが絶対連続ではない
- $P=\{x_0, x_1, \dots ,x_n\}$ を分割(partition)という
- $V(f,P)= \sum_{k=1}^{n} |f(x_{k})-f(x_{k - 1})|$ を変動(variation)という
- $TV(f)=\sup\{V(f,P)\}$ を全変動(total variation)という
- 全変動が有界な関数のことを有界変動関数(bounded variation function)という
- $f(x) = \sin(\frac{1}{x})$ などはxが0に近づくほど上下に激しく振動するため、全変動は無限大となり、有界変動ではない
- $TV(c \cdot f) = |c| TV(f)$
- $TV(f + g) \leq TV(f) + TV(g)$
- $TV(f - g) \leq TV(f) - TV(g)$
- $TV(f \cdot g) \leq \sup|f|([a,b]) \cdot TV(g) + \sup|g|([a,b]) \cdot TV(f) $
商は $$ TV\left(\frac{1}{f}\right) \leq \left( \sup \frac{1}{|f|} ([a,b]) \right)^{2} \cdot TV(f) $$ なので、以下も成り立つ $$ TV\left(\frac{f}{g}\right) \leq \sup|f|([a,b]) \cdot \left( \sup \frac{1}{|g|} ([a,b]) \right)^{2} \cdot TV(g) + \sup\frac{1}{|g|}([a,b]) \cdot TV(f) $$
分割を増やした場合は全変動は小さくならない(同じか、増える)
- 反対の不等号を両方証明することで、$TV(f, [a,b]) = TV(f, [a,c]) + TV(f,[c,b])$ が得られる
- 全変動が0であることと定数関数であることは必要十分
- ジョルダンの定理(Jordan’s theorem): 関数が有界変動であることと、その関数が2つの単調増加関数の差で表されることは必要十分
- 絶対連続関数なら有界変動関数であるが、一様連続なだけでは有界変動関数とは限らない。また、有界変動関数であっても絶対連続関数とは限らない
- 上極限(limit superior)は、集積点aの周辺が局所有界であるなら、その近傍のsupを考えることにより極限が確定できること、つまり
$$\displaylines{
\begin{align}
\lim_{x \to a} \sup f(x) &= \lim_{\delta \to 0+} S(\delta) \\
&= \lim_{\delta \to 0+} \sup f(N_{\delta}(a) \cap (X \setminus \{a\})
\end{align}
}$$
- 下極限(limit inferior)も同様に定義できる
- 上極限と下極限が一致するとき、その関数は点aで収束し、しかもその値は上極限・下極限両方と一致する
1変数関数の微分(続き)
- 関数$f:\mathbb{R} \supset [a,b] \to \mathbb{R}$ が$[a,b]$で連続で、$(a,b)$で微分可能で、導関数が$(a,b)$で有界なら、fは$(a,b)$で絶対連続関数
- コーシーの平均値の定理(Cauchy’s mean value theorem): $[a,b]$で連続で、$(a,b)$で微分可能なとき、 $$f'(c) \cdot [g(b)-g(a)] = g'(c) \cdot [f(b)-f(a)]$$ となるcが存在する。特にgの導関数が0にならない場合、以下のように書き換えられる
$$ \frac{f'(c)}{g'(c)} = \frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)} $$
- ↑で特に$g(x)=x$のときラグランジュの平均値の定理と同じ主張になるため、拡張された平均値の定理(extended mean value theorem)or 第二の平均値の定理(second mean value theorem)とも呼ばれる
- 1次のテイラー近似多項式(1st degree Taylor approximating polynomial): $P_{1,a}(x) = f(a) + f'(a) \cdot (x-a)$
- fが2階微分可能な場合、2次の近似多項式が設定できて、それは
$$ P_{2,a} = f(x) + f'(a) \cdot (x-a) + \frac{f''(a)}{2} \cdot (x-a)^{2} $$
$$ P_{n,a} = \sum_{k=0}^{n} \left[\frac{f^{(k)}(a)}{k!} \cdot (x-a)^{k}\right] $$
$$ f(x) = P_{n-1,a}(x) + \frac{f^{(n)}(c)}{n!} \cdot (x-a)^{n} $$
- ↑で$n=1$のとき、式を変形するとラグランジュの平均値の定理が現れる。つまりテイラーの定理はラグランジュの平均値の定理の一般化ともいえる
- ↑の右辺第2項は$f(x)$と$ P_{n-1,a}(x)$の誤差とみることができ、n次のラグランジュ剰余項(n-th degree Lagrange remainder)とも呼ばれる
$$ R_{n,a} = \frac{f^{(n)}(c)}{n!} \cdot (x-a)^{n} $$
- または、実数 $\theta \in (0, 1)$ を使って、以下のようにも書ける
$$ R_{n,a} = \frac{f^{(n)}(a + \theta (x-a))}{n!} \cdot (x-a)^{n} $$
- マクローリンの定理(Maclaurin’s theorem): テイラーの定理に $a=0$ を代入したもので、以下の式を満たす $c$ が必ず存在する
$$ f(x) = P_{n-1,0}(x) + \frac{f^{(n)}(c)}{n!} \cdot x^{n} $$
- または、実数 $\theta \in (0, 1)$ を使って、以下のようにも書ける
$$ f(x) = P_{n-1,0}(x) + \frac{f^{(n)}(\theta x)}{n!} \cdot x^{n} $$
- さらに、n階微分可能なだけでなく $C^{n}$ 級である場合、以下が言える
$$ f(x) = P_{n,a}(x) + o( (x-a)^{n}) \quad (x \to a) $$
- すなわち、aとxの差よりも誤差が小さくなる、つまり $f(x) \approx P_{n,a}$ が成り立つことが言えて、これが近似式の正当性の根拠になる
- また、nが大きいほど $(x-a)^{n}$ は急速に0に近づいていくが、↑の式はそれよりも近似式のほうがなお0に近いことを言っているので、これがnが大きいほど近似の精度が高くなる根拠になる
関数fが$C^{\infty}$級の場合、 $$\displaylines{ f(x) = P_{0,a}(x) + R_{1,a}(x) \\
f(x) = P_{1,a}(x) + R_{2,a}(x) \\
f(x) = P_{2,a}(x) + R_{3,a}(x) \\
\vdots }$$ のような関係が無限個成立するので、数列として $\{R_{n,a}(x)\}$ を作ることができ、なおかつこの剰余項が0に収束する場合、つまり $$ \lim_{n \to +\infty} R_{n,a}(x) = \lim_{n \to +\infty} \left[\frac{f^{(n)}(c)}{n!} (x-a)^{n}\right] = 0 $$ が成り立つ場合、元の関数はこの剰余項の総和としてあらわされる。すなわち以下が成り立つ $$ f(x) = \sum_{k=0}^{\infty} \left[\frac{f^{(k)}(c)}{k!} (x-a)^{k}\right] $$↑をテイラー展開(Taylor expansion)という
- ↑で$a=0$で展開するときマクローリン展開(Maclaurin expansion)という
$$ f(x) = \sum_{k=0}^{\infty} \left[\frac{f^{(k)}(0)}{k!} x^{k}\right] $$
- 剰余項のが0に収束するだけでなく、剰余項の絶対値が収束する場合でも、つまり $$\lim_{n \to +\infty} |R_{n,a}(x)| = 0$$ が成り立つ場合でもテイラー展開/マクローリン展開可能
- 自然指数関数は $C^{\infty}$級なので、$a \neq 1 \land a > 0$ のとき $f(x) = a^{x}$ の導関数は $f^{(n)}(x) = a^{x} [\ln(a)]^{n}$
- 自然対数関数は $C^{\infty}$級なので、$f(x) = \ln{(x)}$ の導関数は $f^{(n)}(x) = (-1)^{n-1}\frac{(n-1)!}{x^{n}}$
- ただし、自然指数関数は点0で定義されず、マクローリン展開できないため、かわりに $f(x) = \ln{(x+1)}$ を使って以下のようにする
$$\displaylines{
f^{(n)}(x) = (-1)^{n-1} \frac{(n-1)!}{(x+1)^{n}} \\
f^{(n)}(0) = (-1)^{n-1} (n-1)!
}$$
- sin関数も $C^{\infty}$ 級で、4回で1ループするが、以下のようにシンプルにも書ける(cosも同様)
$$ f^{(n)}(x) = \sin{\left(\frac{n \pi}{2}\right)} $$
- サイクロイドとは、円が回転しながら数直線上を移動するときの点の軌跡で、自転車がイメージしやすい